公益性の構造転換〜パブリック・ベネフィット研究所

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help リーダーに追加 RSS 認定NPO法人と新公益法人を比較する 〜 サポート・テストとベネフィット・テスト

<<   作成日時 : 2008/02/07 00:27   >>

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 ルルです。先日、とあるパーティーで若手社会起業家として注目を集めている(特活)フローレンスの駒崎弘樹さんにお会いしたときに、新公益法人制度のことをお話ししところ、駒崎さんは早速その晩にお調べになって、ご自身のブログで、NPO法人による社会的企業を支援するための法制が整備されない限り「フローレンスを含めて多くのNPOがそのまま公益社団に鞍替えするだろう」とコメントされました。今日は、新公益法人制度のどこが社会的企業に適しているのか?を入り口に、NPO法人と新公益法人とを比較してみたいと思います。

 昨年の12月13日に与党の平成20年度(2008年度)税制改正大綱が発表されました。これによって、新公益法人(と一般社団・財団法人)の税制がどのようになるかやっと見通しがつきました。あわせて認定NPO法人制度の要件緩和も盛り込まれていますので、認定NPO法人と新公益法人の比較表をつくってみました。厳密には、この内容を受けた議案・予算案が国会で成立して初めて確定ですが、新公益法人や認定NPO法人部分の内容自体については与野党とも反対はないと見られています。

認定NPO法人と新公益法人の比較表Ver.1.5 WEBページ版はこちら ← クリック
認定NPO法人と新公益法人の比較表Ver.1.5 PDF版はこちら ← クリック

 WEB版がくずれる場合は、PDF版をご利用ください。Ver.が1.5でない場合はブラウザをリロードするか、ブラウザのキャッシュを削除してみてください。
 詳しくは表を見ていただくことになりますが、ここでは特に大きな違いを取り上げてみます。

 まず、優遇の内容。
 なんと言っても一番大きいのは、新公益法人は本来事業なら法人税法上の「収益事業」に該当しても丸ごと非課税になる点です。これならば、社会的企業の受け皿として、NPO法人よりも、また株式会社などの営利法人や事業協同組合などよりも、最も新公益法人が適していると言えそうです。収益から1円も税金をとられることなく、すべてを事業の拡大に再投資できるからです。収益のあがる事業であるほど成長スピードに差が出てくるでしょう。
 優遇内容ではないのですが、社会的企業の関連で脱線すると、(財団にはないのですが)社団の方にはNPO法人にはない、出資金にあたる制度があるのもプラスです。少なからぬNPO法人が、出発にあたって理事等から長期の借り入れの形で立ち上がり資金を調達していますが、これは貸借対照表では負債になってしまい、債務超過状態になる原因となっています。担保になるものがない、信用保証機関がないことと並んで、このことがNPO法人が金融機関から機動的に間接金融(融資)を受けにくい原因になっていると考えられます。金融庁が金融機関に課しているマニュアルでは2事業年度に渡って債務超過の法人には融資してはいけないとしているそうです。かといって、「貸してください」や「出資してください」ではなく「寄附してください」では大きな額を集めるのは非常に困難です。これが、出資にあたる資金調達ができるとなると、かなり大きな変化になります。株式会社にかなり近づくと言えます。
 また、理事の法人に対する損害賠償責任を有限化できる規定がある(無報酬ならゼロにできる)ことも重要です。

 優遇内容に戻ります。社会的企業と呼ぶかどうかは別として、本来事業はどうがんばっても赤字にならざるを得ず、それを非本来事業の収益で穴埋めするというモデルの法人にとっても新公益法人は、みなし寄附の上限が100%であることが魅力です。収益をすべて穴埋めに使えば税金はゼロです。

 次に要件を比較してみます。
 NPO法人の場合、寄附優遇の対象となるために認定を受けると、実績判定期間のうちに集めた寄付を70%以上、使い切らなければなりません。これでは、例えばいつ起こるかわからない震災に対応するための資金を集めてプールしておくというようなことができません。これに対して新公益法人では、特定費用準備資金という目的を明確化した会計項目を作れば、そこに積み立てておくことができます。

 他にも、認定NPO法人は本来事業への支出が全事業費のうちの80%でなければならないのに対して、新公益法人は全支出の50%以上なら良いなど、ハードルが低いと言えます。

 また、ファンド・レイズのパターンとして、たくさんの小口の他に大口の寄付を1件だけとることに成功した場合、認定NPO制度だとそのせいでかえって再認定の阻害要因になってしまうという大問題がありますが、新公益法人なら手放しで喜べます。新公益法人の方が大口を開拓するタイプのファンド・レイザーを育てやすい制度だと言えます。

 何が公益事業なのか、という基本要件も、従来の主務官庁制の時代と異なり、NPO法人と同じ、「別表×不特定多数の者の利益」となり、間口はNPO法人とそれほど違わなくなると思われます。(法人の要件としてはどちらもその他に非営利=非分配原則が加わります)

 ところで、こうして要件をみてみると、「収入面を見る」ということを打ち出している認定NPO法人のパブリック・サポート・テストも、じつは収入面だけでなく、支出面をあわせてチェックしている制度であることがわかります。しかも、支出面の要件も新公益法人のパブリック・ベネフィット・テストより厳しいように見える。。。ということは論理的には、支出面だけを要件にしているパブリック・ベネフィット・テストを採用している新公益法人の要件の方が、クリアする団体の数が多くなるはずだ、ということになってきます。

 新公益法人の方が厳しくなるのは、財務規律と機関相互が牽制しあうガバナンスの構造の2つです。財務規律を守るために会計関係がかなり細かくなりますので、常勤の経理スタッフを雇える体力のある組織でないとさすがに新公益法人は無理だと思います。(また、掲げている事業の専門性のあるスタッフが一人もいないというのはおそらくダメです) とは言えガバナンスの方は、まあ内部で大きな揉めごとで紛糾したりしなければ、NPO法人とそれほど実際の運営は変わらないはずです。
 たしかに、理事も監事も理事会が選ぶという定款でも許されてしまうNPO法人に比べれば(理事会にとっての)自由度は低いのですが、そもそも監事を社員総会ではなく、モニターされる立場の理事会が自分で選べてしまうという現在のNPO法人制度の方がいかがなものかと思うのは私だけではないはずです。しかも、やろうと思えば社員総会の議決事項は定款の変更と解散、合併だけで、あとは全部理事会が決めるという定款も可です。これでは普通は定時総会でやることがなくなってしまう(笑。NPO法人には財団型がないからそういうやりかたもできる必要がある、ということを言う人もいますが、現在の財団の方には一応、理事会を牽制する評議員会というものがあります。こうしてみるとやはりNPO法人というのは、ボランティア団体とは言いませんが小規模な団体を想定した簡易型の法人制度という感想が否めません。大きな金額を動かして社会に大きな影響を与えるようになった場合、民主的なガバナンスが限りなくゼロでいい(理事会だけで何でも決められる)というのはさすがに問題です。
 NPO法人制度が大きな意義を持っていたのは、従来の公益法人制度(主務官庁制)のもとでは官庁と異なる価値観の団体が法人格を得るにはNPO法人格しかなかったからなので、NPO型(=価値観の多様性型)の新公益法人制度(と登記だけで設立できる一般社団・財団法人制度)が始まって前提が変われば、その意義も大きく変化をこうむるのはやむを得ないところでしょう。公益法人改革がNPO型になったのはまさにNPO法人制度が突破口を切りひらいたからなので、その連続性・継承性を重視すべきです。(ただ、法人制度としては当面は併存させて相互に影響を与えあう形のままにしておいた方がいいと思います)
 
 最後はちょっと脱線しましたが、総じて、満たさなければならない要件とそれによって得られるメリットとのトレード・オフにおいて、認定NPO法人よりは新公益法人の方が得られるプラスが大きいと私などは思うのですが、皆さんはいかがでしょうか。

ルル こと 富永さとる

2008.2.10追記
 比較表のバージョンを1.3にしました。1.2で変わったのは特定寄附金の損金算入の所得部分のパーセンテージ(2.5%→5%への訂正)、1.3で変わったのは認定NPO法人の情報公開内容を詳しくしたことです。
 特に注意を喚起したいのは認定を受けた場合のNPO法人の作成書類の増え方です。一般社団・財団法人が公益認定を受けるときの書類の増え方に比べて、NPO法人から認定NPO法人になるときにはかなり国税関係のためだけに必要になる些末な書類が多いように見受けられます。NPO法人は別として、認定NPO法人になるにはいずれにせよ会計担当の常勤職員が必要になりそうです。

2008.2.12追記
 比較表のバージョンを1.4にしました。認定NPO法人の欠格事由に、NPO法人の認証基準から、いわゆる暴力団条項の部分を加えました。

2008.2.18追記
 比較表のバージョンを1.5にしました。認定NPO法人の情報公開対象から「寄付者名簿」を削除し、「各事業年度における寄付金の合計額が20万円以上である役員、社員又はこれらの親族等の名簿」を追加し、国税庁へ提出する海外送金報告は200万円超の時であることを明記する訂正を行いました。

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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
質の高い情報発信、ありがとうございます。とてもためになりました。

ちょっと本筋から外れた質問で恐縮なのですが、非営利組織のための信用保証協会がこれまでにないのは、何が最大の障害になっているのかご存知でしたら教えていただけますか?

NPO法人や新公益法人のための信用保証協会を創ろうとすると、何が必要なんでしょうか?
cloudgrabber
2008/02/10 16:10
信用保証機能については私も最近、その重要性に気がついたばかりで、調べなきゃいけないと思っている段階です。NPOバンクと並ぶ重要な機能、また、NPOバンクにとっての重要な機能になっていく可能性がありますね。直接貸す場合は貸金業法とか銀行法の関係になるわけですが、信用保証機能については何か規制があるのか、これから調べなければなりません。ある程度のことがわかり次第、記事にしたいと思います。今はまだお答えできなくてすみません。
ルル
2008/02/10 17:02
認定NPO法人と新公益法人の比較表作成ありがとうございます。公益法人協会時代からメーリスで種々情報をいただきましたが、この比較表がとってもわかりやすいです。
alchan0726
2008/02/10 17:27
alchan0726さん、ありがとうございます。とっても励みになります。これからも何かご要望とか、気がつかれたこと、ご質問などあったら是非よろしくお願いします。
ルル
2008/02/10 19:08
迅速なご回答ありがとうございます。フォローアップの記事を楽しみにしています。

ちょっと調べてみたところでは、中小企業の場合には、信用保証協会の損失補償機能を担う全国信用保証協会連合会の根拠法となっている「信用保証協会法」と、再保険機能を担い代位弁済も行う「中小企業金融公庫」(今年10月に日本政策金融公庫に統合予定)の存在が鍵になっているようですね。

法整備はもちろん必要なのでしょうが、ただ個人の信用保証は民間企業がやっていますから、法律を待たずとも、民間でできることは色々あるのではないかと考えています。

これからも色々と勉強させてください。
cloudgrabber
2008/02/11 09:40
cloudgrabberさん、貴重なご教示ありがとうございます。勉強させていただき助かります。
福祉国家的な促進策の有無よりも、強行法規としての規制がないならとりあえず民間で着手できちゃうね、というNPO的な発想に賛成です。やってみた上で、行政による支援策が必要という結論になったら、その次はアドボカシーという段取りでしょう。
こうした情報を交換し、蓄積していけるブログはまだあまりないと思いますので、ぜひ情報の蓄積場所(公共財)としてもご活用ください。
ルル
2008/02/12 01:37
ルルさん、もしもmixiをされていたら、一度ソーシャルファイナンスのコミュ(http://mixi.jp/view_community.pl?id=2877789)を覗いてみてください。

非営利組織向けの信用保証についてのトピックを立ててみたところ、いくつか有益な意見が出てきています。
cloudgrabber
2008/02/17 12:44
cloudgrabberさん、ご案内ありがとうございます。早速コメント書いてみました。
ルル
2008/02/17 13:08
こんにちは

これはわかりやすいです

私も認定NPOと新公益法人の両制度を勉強して、アドバイスできるようになりたいと思っていますので、このブログでもいろいろと勉強させていただきます


脇坂誠也
2008/02/19 22:38
NPO会計・税務の専門家集団の中心でいらっしゃる脇坂さんからお褒めにあずかり光栄です。こちらこそ、今後ともご指導よろしくお願いします。
@PROサイトからも勉強させていただきます。http://www.npoatpro.org/potal/
ルル
2008/02/20 16:19
こんにちわ、荒井と申します。
以前、ブログに書き込みをいただき、ありがとうございました。

さて、個人の経験から話をすると、NPO法人の場合、会員の入会の制限ができない以上は、ある程度理事会主導型の定款にするのは組織の防衛上やむをえないと考えます。

例えば創業期にうるさ型の会員がいて、総会の運営がままならなければ、事業どころか組織の存続が危うくなるのかな、と考えています。

NPO法人でブロキシーファイトが起きるぐらいになれば、それはそれで面白いですが。(w
荒井正志
2008/03/10 11:42
荒井さん、ご訪問ありがとうございます。
そうですね、私も機動的な運営のためには、議決事項の割り振りは、ある程度理事会主導型の定款にしておいた方がいい、という意見です。ただ、その分、役員、特に監事は総会で選ぶ方が筋が通っているという感じがします。相互牽制のためのバランスですね。ちなみに私が知っている人権系の社団の総会は大昔の学生大会のようでした(笑。あれはあれでお祭りのようで楽しくはありますが。
よく、株式会社との対比でNPO法人は社員全体で運営ということが言われますが、あれは定款自治の幅が広いことを理解していない(役所のモデル定款だけを鵜呑みにした)意見ですよね。
ところで荒井さんは千代田のプラットフォームスクエアにいらっしゃるんですね。プラットフォームスクエアには遠からず行ってみたいと思ってますので、その時ご挨拶させてください。
ルル
2008/03/10 12:38

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